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販売代理店契約の特徴と作成のポイント1−寺村総合法務事務所

販売代理店契約のポイント1COMPANY

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1.販売店契約とは

販売代理店契約とは、一方当事者が製造したり販売したりしている製品について、他方当事者をその再販売店に任命することを目的とした契約です。

また、言い換えれば、再販売権の許諾をすることを目的としているとも言えます。

ただ、権利の許諾といっても、ノウハウや特許等のライセンス契約とは構造が異なります。


通常のライセンス契約においては、許諾を受けた側が技術や特許を自由に用いて製品を作り、その製造数に応じてロイヤルティを許諾者側に支払う、という構造をとります。

販売代理店契約においては、販売店が供給者側から商品を購入し、それを第三者に販売していくという構造となり、供給者側は自らの商品を販売店側に販売する(卸売りする)ことによって利益を得ていくことになります。

なお、これまで「販売代理店契約」という言葉を使ってきましたが、本来は


  「販売店契約」 (英文契約でいうところのDistributorship Agreement)

と呼ぶほうが正確と言えるでしょう。

上記の通り販売店は供給側から商品を「購入」し、購入した商品を自らの責任で小売りしていくことになります。
従って、販売店は供給側から独立して商売をする小売店的な立場になるのであって、決して供給側の「代理人」になるわけではありません。

(代理人であれば、商品の売買契約は、供給側と最終購入者との間に成立することになります。)

国内の契約では、販売店契約の場合も、代理店契約の場合もどちらも「販売代理店契約」と一括して呼ぶことが普通です。
しかし、その法的な意味合いや内容は、上記のごとくかなり異なるものであり、契約書の表題がどうであろうとも、内容をよく見てみないと、販売店契約なのか、代理店契約なのかを把握することができない状態になっていますので、注意して契約を読む必要があります。
(なお、代理店契約については、下記の2.で簡単にご説明します)

販売店契約は、上記の通り、供給者と販売店との間の継続的な「売買=卸し売り」という性格が強いことになります。

従って、相当部分が売買基本契約(=取引基本契約)に類似することとなりますので、販売店契約においても、「個別契約」に基づき個々の取引が成立していくこととなります。

なお、「個別契約」とは、個々の発注に関して成立する契約をいいます。
継続的に供給者から販売店側に販売=卸売をしていくことから、その販売条件のうち個別契約に共通して適用できるような一般条件、例えば、支払条件とか、債権譲渡禁止とか、再販売代理店の起用の可否といった事項について、あらかじめ決定しておくことにより、両当事者間で安定的で効率的な関係を築くことができます。
例えば、支払い条件などについて、
「商品の納入月末締めにて翌月末までに、売主が指定する銀行口座に現金を送金することにより支払う」
というような条項を定めることにより、個々の発注時に支払い条件についての交渉を省くことができるわけです。
そこで規定される内容は、発注商品の型番と数量、具体的な納入期日というように個々の注文の際にしか決められない事項を除いて、すべて販売店契約中に定めることが可能です。
ただ、販売店契約に限られた条項だけを定め、支払方法、納入場所、検査・検収方法などを個別契約に委ねることも可能です。ただ、あまり個別契約に委ねすぎると販売店契約を取り交わした意味が薄れてしまいます。
従って、取引や商品の内容や状況に合わせ、販売店契約に盛り込める内容と、どうしても個別契約に委ねなければならない項目とを峻別していくことが必要になります。

2.「代理店」契約について

販売代理店契約として包含されるものの中に、代理店契約、すなわち、代理店側が供給者側の「代理人」として行為する形態の契約もあります。

この場合、供給者と代理店との関係は「代理関係」です。

つまり、代理店が顧客に製品を販売した場合、その売り上げが立つのは、あくまでも「供給者」側であり、代理店は当該契約の成立を代理した手数料を、供給者側からもらう、という関係になるわけです。

このような性格から、代理店契約においては、供給者側と代理店側との間の商品の授受がある場合でも、売買契約ではなく委託的な性質を持つことになります。

代理人が単に契約の締結のみを引き受ける場合は、商品は供給者側から直接顧客に納品されることになりますので、代理人が商品にタッチしないこともあるわけです。

代理店契約の場合、代理店(=代理人または仲介人)の権限がどこまであるのかを規定することが大切です。

法的な意味の「代理人」、つまり、本人である供給者に成り代わって「意思表示」をし、供給者と顧客との間の売買契約を成立させる権限を持っている場合もあります。

しかし、単なる「仲介者」、つまり、供給者と顧客との売買契約の締結の仲介をする権限しかなく、実際に契約をするかしないかは、本人たる供給者に決定権がある、という場合もあります。

また、代理人(仲介人)が顧客から代金を受領する権限を有するのかどうか、という点も問題になります。
もし代理人等が顧客から代金を受領する権限がある場合、代理人等の手数料との相殺が可能かどうか、などがポイントとなります。

さらに、代理人等は、顧客との売買契約の当事者になるわけではありません。
従って、顧客から「売主の担保責任」などの責任を追及されたとしても、本来はその責めを負う立場にありません。
しかし、顧客へきちんと説明していなかったような場合、代理人が売主と同視される危険性もありますので、どのような説明をするか、あるいは賠償問題が起こったような場合は供給者と代理人とがどのような責任分担となるのか、などを定めておくべきでしょう。

なお、「特約店」契約と呼ばれるものがあります。
これは、販売店契約の場合、代理店契約の場合、仲介契約の場合などがあり、内容を判断するためには、内容を良く見てみる必要があります。

本ページの続きは、以下をご覧ください。

販売代理店契約契約のポイント2
販売代理店契約契約のポイント3
販売代理店契約契約のポイント4
販売代理店契約契約のポイント5
販売代理店契約契約のポイント6



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代表 寺村 淳
 東京大学法学部1985年卒
 日本製鉄法務等企業17年
早稲田大学オープンカレッジ講師
 行政書士/宅建主任有資格
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TEL042-529-3660


著書

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